○細野豪志君
民主党の細野豪志でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、政府提出のいわゆるPKO協力法改正案につきまして、関係大臣に質問を行います。(拍手)
九月十一日の米国における同時多発テロ以降、世界はテロリズムと闘っております。今回の闘いに最初に挑んだのは、ハイジャックされた四機の旅客機のうちの一つ、ユナイテッド航空九三便に乗っておりましたジェレミー・グリックさんであります。
技術系会社の営業部長であったグリックさんは、仕事でサンフランシスコに向かうために、九三便に乗り込みました。彼は、ハイジャックされた機内から、地上の妻のリズベイさんに対し携帯電話で話し、既にハイジャックされた他の二機がワールド・トレード・センターに激突したことを知りました。絶望に満ちた機内で、グリックさんは、被害を最小限度に食いとめようと、文字どおり決死の行動に出られております。全米学生柔道チャンピオンであったグリックさんは、奥さんに対し、これから操縦席に突入する、娘を頼むと言い残して、乗客の協力者二、三名とともに操縦席に突入をいたしました。激闘の末、旅客機はピッツバーグ郊外の森の中に墜落をしております。九三便のターゲットは、ホワイトハウスがあるワシントンであったと言われております。
娘を持つ三十一歳の青年の勇気ある行動でございます。全く同様の環境にある私として、彼の勇気に心より敬意を表したい、そういう思いでおります。日本の武道を学んだ彼の行動は、米国人のみならず、我々に対しても大きな勇気を与えているのではないでしょうか。(拍手)
忘れてはならないのは、九月十一日以降、世界じゅうの多くの警察官、消防士、軍人、NGO関係者、この多くの方々が平和のために誠心誠意、努力をしているということでございます。もちろん、日本人の中にも、日本国内外で努力をされております自衛官、警察官、消防士、またパキスタンのような、今、危険にさらされている地域で活動しているNGOの関係者の方々、数多くいらっしゃいます。
テロ特措法に関連をいたしまして、私は、何人かの自衛官、警察官の方から話を伺いましたけれども、その中で、彼らのように危険に身をさらしながら働く方々の尊厳を我々は余りにも軽んじていないかということを感じました。彼らが誇りを持って働くことができる環境を整備することは、我々政治家にとって最低限の義務ではないでしょうか。
PKOを論じる際に、もちろん憲法との整合性は極めて重要でございます、しかし、同時に、活動に参加するPKO要員の円滑な任務の遂行と、何よりも安全に対する配慮が絶対に必要である、私はそのように考えております。
以上の基本認識をもとに、関係大臣に、まずはPKOに対する基本認識からお伺いをしたいと思います。
九月十一日の米国における同時多発テロは、二十一世紀の国際社会の平和と安全を守る上で、我々に大きな変化をもたらすものであります。二十世紀、世界は、国家間の紛争の予防に知恵を絞ってまいりました。今世紀、国家ではない主体が地域紛争やテロによって民主的な社会に生きる私たちを脅かす事態が、現実のものとなっています。このような地域紛争やテロの背景には、拡大する一方の貧困問題、民族、宗教などをめぐる歴史的に深い問題が潜んでいることは、言うまでもございません。このような紛争の変化に伴い、国連においても、昨年八月には、PKOの見直し案、いわゆるブラヒミ・レポートが発表されております。
もう一つ考えていくべきは、我が国におけるPKOの重要性であります。天然資源のない、そして国際貿易に依存している我が国にとりまして、他国に増して、国際社会の安定が我々の生存の上で極めて重要になってまいります。私ども民主党は、議論に議論を積み重ね、国連を外交の中心の一つに据える我が国においては、PKOを人的貢献の大きな柱に据えるべきであるとの結論に達しました。
このような国際環境の変化、また我が国の置かれている状況を考えたときに、我々はこのPKOに対してどのように取り組んでいくべきなのか、特にこの法律案につきまして、どのような問題意識のもとに出されたものなのか、官房長官及び防衛庁長官にまずお伺いをしたいと思います。
次に、臨時国会終了間際に本改正案が提出された理由についてお伺いをいたします。
一昨日、ワシントンで開催されましたアフガニスタン復興支援会合を皮切りに、これからさまざまな形でアフガニスタンへの復興支援が始まることが予想されます。今回のPKO協力法の改正案がこの時期に唐突に出てきたことは、このアフガニスタンへのPKO部隊の派遣を念頭に置いたものではないか、そういう認識を今多くの国民は持っております。実際に、与党の幹部の中では、アフガニスタンでの地雷除去にPKOを派遣する、そういうような方向性の発言すら聞こえております。しかし、私は、今回の改正案が仮に成立をいたしましても、参加五原則が基本的に維持される限り、アフガニスタンでのPKOには、到底、日本が参加できる状況にはならないであろう、そう考えております。
アフガニスタンでの国連PKOの可能性、また日本の参加の可能性につきまして、現時点で政府がどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。特にこの点は、アフガニスタンの復興においてまさに陣頭指揮をとられていると自任をされております田中眞紀子外務大臣にお答えをいただきたいと思います。また、福田官房長官にもお答えをお願いいたします。
次に、PKO参加五原則についてお伺いをいたします。
五原則は、我が国がPKOを派遣する際に、その判断を行う極めて重要なものであります。与党内での議論を見ておりますと、政局的な思惑のみが交錯をして、この重要性がどれぐらい吟味をされたのか、私は疑問を持っております。
第五原則の武器の使用基準については、先般のテロ特措法に倣って、とりあえず、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」、これに対する防護は、武器の使用が可能となりました。PKO要員の安全確保に最も重要な武器の使用を、趣旨の異なる法律の文言を流用するという小手先の修正に終わった、そういう感が否めません。
具体的に伺ってまいります。
「管理の下に入った者」とは、具体的に、どのような状況の、だれを指すのでしょうか。「職務を行うに伴い」といった場合、PKO協力法における職務というのは、テロ特措法よりもはるかに広く、任務の種類も異なっております。
今回の改正でPKFも解除されると仮定をいたしますと、例えば巡回や監視業務などを実施する際に、他国のPKO部隊の要員とともに行動する場合なども想定をされます。どのような状況になれば、他国のPKO要員のために武器を使用することが可能となるのでしょうか。また、PKFの本体業務に参加する場合、今回の武器使用の基準の見直しで十分と判断されるのかどうか、防衛庁長官にお伺いをいたします。
さらに、武器の使用基準をめぐりましては、もう一つ、重大な問題がございます。
本改正案を見る限り、たまたま我が国PKOの隊員とともに現場にいる者を防護する場合に限っては武器を使用することができるというようにも読めます。我が国のPKO要員は、現場にいる者、例えば国連職員や非武装のPKO要員、NGOスタッフなどを守らなくてはならないのでしょうか。それとも、武器を使用して守ることは可能ではあるが、場合によっては、守らなくてもよい、守らないこともあり得るということなのでしょうか。現場でともに職務に従事している非武装のPKO要員にとりましては、何かあった場合に必ず助けてくれる、そういう認識でともに活動を行うのとそうでないのとでは大きな違いがあります。
民主党は、非武装のPKO要員をしっかりと守れるような措置を講ずるべきだとの考え方の中で検討を行ってまいりました。今回の武器使用基準の緩和だけで、ここで私が申し上げました我が国の非武装のPKO要員は、果たして守られるのでしょうか。この点は極めて重要ですので、防衛庁長官の明確な御答弁をお願いいたします。
次に、PKO参加における第一原則の、紛争当事者間の停戦の合意について伺ってまいります。
PKO法第三条では、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」と明記をされております。来年三月には、東ティモールにPKO部隊を派遣するとの情報も既に出てきておりますが、現在の東ティモールにおいて、果たして、紛争当事者とはだれのことを指すのでしょうか。また、紛争当事者の間で合意があるかないかの判断は、何に基づいてなされるのでしょうか。冒頭で申し上げましたとおり、近年の国際社会における紛争は、極めて複雑な様相を呈しております。紛争当事者が不明確な場合に、第一原則につきましてどのように適用をされるのか、官房長官に伺いたいと思います。
ここまで指摘してきましたとおり、今回提出されました法案は、国会の論戦を非常に重要視する余り、我が国の国際協力がどうあるべきなのかという大局的な視点を全く欠いたものとなっております。
PKOや人道的な国際救援活動は、それ自体、激動する国際情勢の中でさまざまな影響を受けて変貌しつつあります。ブラヒミ・レポートでは、PKOの迅速かつ効果的な展開能力の必要性や、平和維持活動の軍事要員、文民専門家などの効果的な活用という内容が、既に盛り込まれております。これまで以上にPKOの専門性、特殊性が要求をされる、この状況を考えたときに、我が国も、PKOを行うための組織を、警察や自衛隊とは分けて、別途、新たに創設するということも考えなければならない時期に既に来ているのではないでしょうか。
我が国は、国際情勢の変化を敏感にとらえ、国連の一員としてその責任を果たしていく必要があります。PKOは、国連憲章上の根拠規定に基づき粛々と行われてきたわけではありません。むしろ、予見しがたい紛争が発生をし、国連がそれに対応を迫られる中でまさに進化をしてきたと言えるのではないでしょうか。この教訓を踏まえ、我が国としても、紛争の解決と、平和で安定した国際社会の建設を模索してPKOにかかわっていくという主体的な姿勢が今こそ求められていると私は考えます。
我が国は、法律の個々の条文に則して何ができるのかという制約の議論から入るのではなくて、国際平和のために一体我々は何をなすべきか、この原点に立ち返りまして国際協力のあり方を議論していくときに来ている、私はそう考えております。この点につきまして、官房長官及び外務大臣の御決意を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
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