4月21日

個人情報保護に関する特別委員会  

○細野委員
 きょうは、参考人の先生方には本当にお忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 時間も限られておりますので、早速お伺いをしたいというふうに思います。
 まず、堀部先生にお伺いをしたいんですが、先ほど来、第三者機関と主務大臣の話で議論がございました。経験があり、また行革の観点からも、現段階では主務大臣でいいのではないかという先生の御意見でございましたけれども、私どもの方としては、むしろ、やはりそれぞれの大臣及び官庁のある程度の恣意的な運用の懸念があるのではないか、また、それぞれの個人情報の守り方について基準が異なって混乱が生じるのではないか、もともとそういう思いを持っておりました。
 また、ここの国会での議論は、実はこの主務大臣のところで相当もめまして、では、その主務大臣に当たらないようなところというのはどうするんだ。大臣の方からは、それはそれぞれ担当は調整してやるんですという御回答があったんですが、一方で、取り締まられる対象からすると、国家公安委員会に取り締まられるのか、経済産業省に取り締まられるのか。例えば、古物営業法に該当するようなネットオークションの会社なんかは、これがどちらかもわからないというような、国民の側から見ると主務大臣制というのはそういう懸念があるというのは、この委員会の中でも、これは担当はどこなんですかと言ったときになかなか大臣が答えられなかったりしまして、そういう懸念が出ておるんですね。
 この問題、もう堀部先生はよく承知をされていると思うんですが、これをどう解決するべきなのか、果たして適切に運用できるものなのか、その辺の問題意識を少し教えていただきたいというふうに思うんです。

○堀部参考人
 細野先生の国会における審議状況につきましては、私は詳しく存じませんので、私が先ほど述べたことを敷衍することになろうかと思います。
 実は、主務大臣制をどうするかということにつきましては、法制化専門委員会のときにも、それでいいのかという疑問は出したことがあります。
 第三者的な機関を設けることも、実現可能であればというふうには思いましたが、先ほど申し上げましたような、一方では、私が関係してきたようないろいろな、個人情報取扱事業者と法律で言う人たちは、主務大臣のもとでそれぞれ対応をし、また、実績を上げていく。それをまた認証する制度もつくりまして、単に何か悪いことをしたから処罰するということではなくて、きちんとやっているということを認めて、マークなどを付与していく。この提案は、実は神奈川県で一九九〇年に条例をつくりましたときに既に導入しまして、それを国レベルでも広めてきたものであります。
 そこから抜け落ちるところはどうなのかということだったんですが、事務局の説明では、どの主務大臣になるかはそこの時点では議論はしておりませんが、すべての分野について主務大臣というのは対応可能なんだ、こういうことでありまして、それが、今度の法案でも、明確でないところは主務大臣をだれにするかということを決めるようになっているということになりまして、確かに対象となる事業者からすると不安な点もあろうかと思います。しかし、法律的には主務大臣がいずれの事業者についても対応可能というふうに読めるのではないかというふうに考えていまして、具体的には運用の中で解決できるのではないか、そのように見ております。
 先ほども申し上げたことなんですが、第三者機関を私は否定しているわけではありませんで、これは必要だと思います。しかし、現段階で、これは最初の方でも申し上げましたが、日本の個人情報保護の考え方というのは、残念ながら、先進国の早いところから比べますと二十年以上もおくれています。これのレベルアップを今どのようにして図るかということが急務だと考えております。十分なレベルに達して、具体的に第三者機関が機能するような時期というのができるだけ早く来ることを私は期待しております。
 そういう段階になりますと、野党提案のようなものも、ぜひこれは取り入れていくべきであるというふうに個人的には考えているところでありますが、現段階では、主務大臣制で何らか対応していき、その間の調整は各省庁間で十分図っていただきたい、このように考えております。

○細野委員
 本当に、この分野の大家の堀部先生に私のような者が意見を申し上げる筋ではないんですが、おくれているからこそ、第三者機関できちっとキャッチアップを図った方がいいんではないかということで、野党案を提案させていただきました。
 率直に、先生に一言、これは難しい評価になろうかと思うんですが、先生が考えられている個人情報保護のあり方、姿というのは、理想像が恐らくおありだと思うんですね。そこから見て、今回出されてきた法案は、政府のものということで結構なんですが、大体何点ぐらいのものだ、将来像、具体像、理想像からすると何点ぐらいのものだという評価を現時点で堀部先生はされているか。これはもう端的で結構ですので、お願いします。

○堀部参考人
 大変答えにくい質問でございますが、大学の教師ですので、よく答案はつけております。それからしますと、ちょっと、優、Aに当たる八十点まではいかないかもしれませんが、七十点台はつけることができるのではないか。ですから、中間のところで合格しているというふうに私は採点したいと思います。

○細野委員
 先生の教え子の皆さんは少し幸せな感じでいらっしゃるのかなという気がしなくもないわけでございますけれども、七十点という評価でございました。問題点があるというのも一方で先生自身が感じられているところだというふうに思います。
 続きまして、田島参考人にお伺いをしたいんですが、先ほど、メディアに対しては報道の定義の問題であるとか主務大臣の関与のあり方で問題があるというようなお話をされました。極めてわかりやすいお話だったというふうに感じました。
 市民団体の方も懸念があるというふうにおっしゃったんですが、いま一つ国会の議論の中で明らかになっていないのは、市民団体の活動がどういう形で制限をされる可能性があるのか、どういう懸念があるのかということについて、委員の間でいま一つ明確にイメージが共有をされていないような気がして仕方がないんですね。
 先生の方から、もう少し、できる限り具体的に、要するに市民社会それ全体がどういう形で侵害される可能性があるのか、萎縮する可能性があるのかということについて御意見をいただければというふうに思います。

○田島参考人
 今の御質問の前提は、要するに、義務規定が個人情報取扱事業者というところに適用されるわけですね。表現だけ読むと、何か個人情報を専門に扱っている人たちだけが、あるいは企業みたいなものだけが対象になるかのように見えるんですが、実は、定義規定のところを見ますとそうなっていないわけであって、しかも、業としてというのは、決してこれは営利だけではない、非営利も当然含むという解釈がされております。
 しかも、もう一つ大事なことは、データベースだけじゃないんですね。「データベース等」となっているわけですから、マニュアルな情報も含むんですね。個人情報が容易に検索できるようなシステム全部入りますから、例えば、はっきり言いまして、電話帳とかさまざまな名簿のたぐいとか、それ自体では全部対象としてカバーされるわけです。
 コンピューター情報もそれからマニュアル情報も全部含め、しかも、営利、非営利関係なくということでもし適用されるとすれば、そこで役人の方々は五千件程度ということを言っているんですが、これは法律には全然書いてありません、政令で定めるということになっています、いずれにしても、かなり広く網がかかるんですね。先ほど清水参考人が未成年にもかかるんじゃないかと言われましたけれども、可能性としても未成年も当然要件に入っていれば含むわけです。
 そうすると、市民団体とか、団体でなくても普通の市民でも、コンピューターにせよ名簿のたぐいにせよ、膨大な個人情報をいろいろな形で取り扱っていて、さまざまな形で、活動で、名簿のたぐいにしても活用しているわけですね。したがって、適用のされ方次第ではそういう人たちも広くカバーされてしまう、これは余りにも広過ぎるのではないかということが一つです。
 それからもう一つは、それで適用除外規定というのがあるんですけれども、ここでの適用除外規定は、先ほど来議論していますように、非常に狭いんですね。報道機関が報道目的で取り扱っている場合、あるいは著述の従事者が著述目的で取り扱っている場合というのはあるんですけれども、先ほどの市民団体、市民、労働組合等々が、例えば調査活動で個人情報を扱う、あるいはそれを中で利用する、外部に提供する、こういうものについては全く除外の対象にされておりません。
 ですから、プロフェッショナルの人たちは規制から外れるんだけれども、同じようなことをやっていても、そうでない人たちが何で大臣の命令とか処罰の対象になるんだ。これは本当に原理的な問題だと思うので、議論の対象としてきちんとやるべきだ、私はこういうふうに思っております。

○細野委員
 田島先生の方は、そういう懸念を持たれるからこそ、理想は個別法プラス自主規制だ、次善の策としてはポジリスト方式プラス独立機関だというお話がございました。
 一点だけ、これは若干今後の話につながるんですけれども、先生が提案されるようにポジリスト形式にした場合に、これからどういう形で個別法の議論とつなげていくべきなのか。この辺、ちょっと難しい問題が私どもも研究している中であったんですが、そのことについて先生は今どのようにお感じになっているのか、これは短目で結構ですので、お願いします。

○田島参考人
 私は、やはり理想的には個別法をつくる。なぜかというと、全部事情が違うんですね。医療にせよ通信の業者にせよ全部違う。教育の領域でも違います。ですから、実態に即した規制をするというのが法律をつくるときの大原則だと私は思うんです。すなわち、法律というのは、全部広く網をかけておいて、役人に裁量権を広く与えるというのはよろしくない。そうしないように、立法事実をちゃんと踏まえる、社会的な弊害を具体的に検討して除去して、それにふさわしい対応の形式をとる、こういうことだと思いますね。ですから、個別法が理想である。
 ただし、今の法案では、それに準ずるのは、ポジティブリスト方式でまずやっていく、そして、将来的にはやはり個別法を目指していくべきだろう。だから、そういうふうにつなげていくのは可能かなというふうに思っております。

○細野委員
 田島先生の方は、法律も非常に整理をして陳述をしていただいたので、もう大体、おっしゃりたいことは私もよくつかめてはいるんですが、与党の理事の方もいらっしゃいましたので、今後議論する中で、衆議院もあります、参議院もあります、これだけは克服してぜひ法案を整理してくれと、最後に私はぜひ田島先生に力を込めていただければというふうに思いますので、お願いします。

○田島参考人
 今言った点、すなわち、乱暴に網をかけないで、事実に即した規制のあり方を探求していただきたいというのが一つです。
 それからもう一つは、規制機関の問題はコストの問題ではないんですね。原理原則の問題だと思うんです。すなわち、表現とかコミュニケーションのプロセスに政府がコミットするわけですから、大臣がそこに強大な規制権限を発揮するというのは、これはどう見てもやはりおかしいわけであって、コスト問題ではなくて原理原則問題として対応する、表現の自由の問題として対応するということで、ヨーロッパでも、これは大臣が乗り出すなんてことはしていないわけですよね。ですから、その点はぜひじっくり議論をしていただけたらというふうに思います。

○細野委員
 どうもありがとうございます。
 続きまして、清水参考人にお伺いします。
 先生の資料を拝見して、将来も含めて非常に洞察に富んだ、またこの法案に欠けている部分も御指摘をしていただいているというふうに認識をするんですが、改めて、今の法案をベースに考えたときに、特に行政の方で、この部分が最大の問題で、ここはこう改めなければこの法案はだめなんだというあたり、先生はかなり明確にイメージも持たれているんだろうというふうに推察をするんですが、具体的に少し条文を指摘しながら御指摘をいただければ幸いなんですが。

○清水参考人
 レジュメの方に書かせていただいたところが主な点なんですけれども、先ほど言いましたが、日弁連としましては、やはり第三者機関の問題が非常に重要な問題だと思っております。
 堀部先生ももともと私の先生のような方だし、宇賀先生もそうなんですけれども、そういった意味では、ここに並んでいる者はみんな、考えが対立しているというよりも、よりいい法制をつくりたいということで考え方は一致していると思うんですけれども、日弁連の方で第三者機関というのをどうしてもというふうに申し上げるのは、実態からすると、堀部さんがおっしゃるように、行政機関はそこそこ各省庁考えてきたというのであれば、なおさらのこと統一的な基準の運用ということが重要ではないかと思います。
 各省庁ばらばらというのは、これからさらに数年のうちに急速に変わっていく情報の流通の事情を考えると、ちぐはぐな状況というのは国際的な信用を落とすことになると思います。情報管理がきちんとしている、行政の対応がきちんとしている、民間については必要な部分はきちんと管理されているという関係がある国が、やはり国際的にも信用されるんだろうと思います。
 そういったときに、各省庁の自主性とかといったものが前面に出てくるのは、私はやはり時代おくれだろうと思います。そういったものについて、基盤として各省庁にはあるのではないかと私は思っています。この数年の間に、今ある法から考えれば、十年以上の間法を担いながら、また、この三年の間、行政機関個人情報保護法についても検討してきているはずですし、そのときに自分たちの実情はどうなっているか、どこを改善すべきかということも考えているはずです。
 だとするならば、第三者機関というものを設けたとしても、そこが横暴な振る舞いをするのではなくて、それぞれの目的外利用なりあるいは外部提供なりというものについて実情を踏まえた上での指針を出すことが、実務を損なうことにならないんではないかというふうに思います。
 それと、ファイル簿の問題があります。ファイル簿の作成と公表というのがこの法案の中にありますけれども、作成と公表の問題は分けて考えた方がいいと思っていまして、作成は、私たち日弁連は徹底的にやるべきだというふうに考えています。それは、個人がアクセスする手段はまずファイル簿であるということがありますけれども、これは公表の問題になります。
 公表はできないけれども、なぜ公表できないようなものをつくるべきかというと、行政機関内部でも人事異動が頻繁に行われるわけです。そういったときに、自分たちが何を持っているのか、どのような目的でどういった使い方をしているのかということがわからないと、これからの情報の管理のあり方は、前任者に聞いてみるというようなレベルではいけないのであって、そのためにリストというものをきちんと全面的につくっておく。それをさらに公表するかどうかというのは、その時々の情勢に合わせて極力広げていくという方針で取り組んでいただければいいかというふうに思います。
 それと、管轄の問題は、先ほど申しましたように、これは自己情報コントロール権という言葉を使うかどうかはともかくとして、今回の政府案というのは、個人の権利保護に非常に充実したものになっていると思います、現行法に比べるとはるかにいいものになっていると思いますが、それが実効性を持つ、名前だけではないと言えるためには、各地方裁判所で提訴ができるということが非常に重要なことだろうと思いますので、ぜひこの点は実行していただきたいと思います。
 それ以外に、一部開示の問題ですとかもありますけれども、また別途お答えしたいと思います。

○細野委員
 時間もなくなってまいりましたので、清水参考人にもう一つお伺いしたいのが、住基ネットとの関係、そして国家防衛の観点も必要なんだ、情報管理のあり方がこれから国家の命運をやはり分けていく、そんな時代が来ることは間違いないという認識を私もしているんですが、もう少し具体的にイメージを持てるように、その部分で清水先生が持っていらっしゃる問題意識を御開陳をいただければというふうに思います。

○清水参考人
 住基ネット問題については、現在でも日弁連で取り組んでおりますけれども、ことしの八月二十五日からは、住民基本台帳カードというのが交付をされて住民が実際に住基ネットを利用するという状況が生まれますが、それに先立って、各地方自治体でその住民基本台帳の利用を拡大するための条例をつくるようにということが総務省でこの一月から提案がなされているわけですが、実態はどうなっているかといいますと、その独自利用条例というものは全国でほとんどつくられておりません。今現在でもつくられておりません。
 では、今現在、今の法律で住基カードがないとできないことは何かというと、たった一つしかありません。それは、引っ越し先で引っ越しの手続をするときに住基カードが使える、それだけです。それ以外のものでは、住基カードがないとできないというものは法律上はありません。
 しかし、他方で、住民票コード、住民票番号ですけれども、国の行政機関の方は、すべての分野についてこの番号で個人情報を統合管理しようというふうに進めています。片方で、兵庫県の本人情報保護審議会の中間答申には、自治体で管理している情報についても住民票コードを全部使おうということが進められています。国も地方自治体も、個人の情報を全部住民票コードで管理をするというふうになった場合に、ここにいる皆さんも、全員もちろん管理の対象になるわけです。
 そうした場合に、仕組みとして正確に、ごく簡単に検索しやすくなってしまう。もちろん、それぞれの分野ごとに各省庁とも縦割りで管理しているとは言いますけれども、少なくも、同じコード番号で、どこの省庁でも、どこの役所でも、同じ人の情報は全部同じ番号で管理しているというものがどれほど商品価値があるかということをお考えください。
 それを考えたときに、これを不正に売る者が出てくる、不正に買う者、これは必ず出てきます。現状ですとばらばらに管理をされていますから、集めること自体、非常にコストがかかります。ですから、そういった不正をする人はなかなか出てこないと思いますけれども、同じ番号で管理されているとなれば、それは、一千万あるいは一億、十億をかけても集めたいという人の情報は、日本国内にも何人もいるかと思います。それは国防につながる問題でもあろうかと思います。
 それから、住基ネットの端末、これは、実は現場の管理というものがかなりずさんになっておりまして、先ほどの資料の一に出したのも、地方自治体のセキュリティーレベルはこんなものだという、ファイアウオールについても認識なんというものもほとんどない。完璧だということを総務大臣が繰り返し繰り返し言うものですから、完璧の意味もわからずに言っているものですから、その知識レベルが低くなっているんですけれども、そういったところから、自治体を踏み台としての侵入というものは容易に考えられることです。
 そうしたときに、これは、単に個人としての利益ではなくて、国防の観点からも非常に大きな問題をはらんでいるというふうに考えています。

○細野委員
 どうもありがとうございました。